八月鍬日
仕事で大きなクワガタを見せてもらった。立派なクワガタだった。クワガタは飼ったことがない。クワガタとの暮らしはどんなだろうか。懐くのかな。
先日法事で唐津へ行ったとき、いつのまにか背中に小さなクワガタがついていたらしく、通りすがりの、おそらく私と同じように旅行できていると思しき少年にとってもらう、ということがあった。
散歩に疲れて宿のそばの海辺でぼんやりと黄昏ていると、背後からねぇ、と少年の声がして、振り返ると絶妙な距離感のところに小3~4くらいの少年が立っていて、
「服にクワガタついてるよ」
ともじもじしつつもじっとこちらを見てそう言うのだった。びっくりした。クワガタなんてそもそもあんまり見たことないし、どうしていいかわからずにいると彼が自ら
「とっていい?」
と買って出てくれたので、お願いします、と頭を下げてとってもらった。4センチくらいの小さいクワガタだった。
少年がクワガタを掌にのせて、なにクワガタだろう、とか言いながら見ているので私も一応見たけど、いつからこれを背中に従えていたのだろうと考えるとぞわぞわした。その日は暇で自転車を借りて海のそばの松林や神社に入ったりしていたので、そのどこかから道連れにしてしまったのだと思うが、クワガタは何を思って私の背中にへばりついていたのだろう。私が急に寝転んだりしたら終わりだし、落ち着かなかっただろうな。
そうこうしてるうちにそこに少年の母親もやってきて、そろそろ帰るよ、みたいになって、その時のこの親子の、
「クワガタ連れて帰っていい?」
「え~、クワガタは明日新幹線のれないよ」
「今日だけ」
「え~、じゃあ自分でお姉さんにお願いして」←?!
という会話が、夏休みっぽくてすごく良かった。そして少年の、
「クワガタもらっていい?」
と少しもじもじしつつも目はキラキラとこちらをみながら言ってくる「クワ…」の言い方、ずっと忘れられない。(親子の中で私がクワガタと旅している人みたいになってるけどそれは置いておいて)
それからクワガタ飼いたいな。とちょっと思っていて、今日見せてもらった立派なクワガタ、これなに食べてこんなに大きくなったんですか、やっぱ喧嘩とかするんですか、室内で飼ってるんですか、とかいろいろ聞いてたら、その立派なクワガタが数万円で取引されている超高級クワガタだということを聞かされ、そんなことあるのかよってぶったまげている。背中にくっついてくるくらいがかわいいな。元気かな、クワガタ。あの少年も。
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